気楽に入った森で遭難しかけた話【日記】
中二を終えて数十年経つ私ですが、こじらせちゃったせいでいまだに中二病が治らず日々を過ごしています。
そのせいで、たまたま見かけた面白そうな場所や物などに一直線に飛びつくくせがあるんですよ。
防空壕とかね。
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でもって、仕事の用事でいつもとは違うちょっと離れた図書館へ行ったときのこと、「森の入り口」を見つけたんですよね……。
今日はそんなお話。
その日はどうしてもやらなくてはいけない仕事があって、場所だけチェックして帰宅。
どうにも気になった私は後日、犬とお供の旦那を連れてその森へと再び向かった。
確実に森。
しかし、看板には「市民の森」とか書いてあるので、まぁ、散歩道とかのある、ちょっとヤブ蚊の多い森林公園かな~くらいの軽いノリで進んで行くことにしたのだが……。
少し行ったあたりで、旦那がブツブツ……いや、結構な音量で騒ぎはじめている。
どうやら虫がいるらしい。
しかし、コンタクトもメガネもしていなかった私にはなにも見えない。
見えないならそれは私にとって「いない」と同義語である。
私が死ねば、私という個の世界は終わりを迎え――的なアレである。
だが、宇宙は存在する。
存在するから――――旦那の「ヤバイ!! ヤバイッテ!! ココヤバイッテ!!」という片言の言葉が止らない。
そう言えば、だいぶ森深くなってきたけど、どこまで広がっているのだろうか。この森は。
私と犬がズンズン進むせいで、旦那も仕方なく進んで行くが、明らかにこれ、「市民の森」のレベルじゃない。
ってか、小学校の時の鋸山登山を思い出す急勾配なんですけど。
途中、「森の輪廻転生」的な、生物ピラミッドを図解した看板が出てきたが、下手をするとそこに入りこみそうな程森が深くなってきた。
そして気がついたら……足下にあったはずの道が消えていた。
もはやラピュタのごとくヒトの作った人工物は木々に埋もれ、
周りを見わたしても同じ風景が広がるばかり。
「ああこれが遭難というものか」
初めての体験にテンションが上がる私。
一人、私には見えない6足形態の何者かと戦い慌てる旦那。
歩けば歩くほど森は更に深くなり、市街地のはずなのに木々のざわめきと奇っ怪な鳥の鳴き声しか聞こえない。
ねえ!! この鳴き声って、千葉動物公園で「熱帯雨林の鳥コーナー」で聞いた鳥の声じゃね!?
なんでそんなにテンション上がってんだよ! ここどこだよ!!
本気で遭難したと思い焦る旦那。
いやまぁ、1時間以上同じ風景の中をグルグル回ってるので、たぶん遭難してるかもしれないけど、今時スマホあるし、一応市街地の森なんで、いつかは森の端に出るから台状だろ。
なにより、我々には犬がいる。
そう、人間なんかより100倍野性的直感に優れた犬がいるのだ。
「お家帰ろう」
それがうちのワンさんに帰宅を促す合図の言葉。
お手とお替わりの区別も付かないワンさんだか、たぶんきっとわかってくれるはず。
そんな犬に付いていくことしばし。
なんか森の中心部にたどり着いた。
なんだよこの大きさの樹。
後ろにシシ神様とか控えているんじゃないのか?
ここ、市民の森じゃなくて「禁断の森」とか「ザグーの森」とかって名前で、森に失礼なことをした奴の背後に忍び寄り、その足に捕まり遭難させる精霊とかいる森なんじゃないのか?
というか、犬は我々をどこに誘う気なのか。
「市民の森で遭難しました」そんな言葉が過ぎる三十路過ぎの夫婦。
さすがに恥ずかしい。
だが、もうこの森に入って1時間以上歩いている。
我々の横の茂みからは「ガサガサ」と何かが走って行く音も聞こえる。
軽い絶望感を覚えたその時。
道に出ました。
いつの間にか復活している道。
ということは、今まで歩いてきた道は(いや、道ではなかったが)正規の散歩ルートなのか?
老人だったら脱水か疲労で死んでるぞ?
汗だくで疲れ切っている旦那。
首を傾げる私。
今だ元気に森を歩く犬。
そうして抜けた森の出口は…………。
道路脇の穴のような出入り口でした。
なにこれ。
本当に出入り口なわけ?
不思議の国のアリスですら、もう少し「出入り口らしい出入り口」に落ちていったよ?
うっかり隣の家の垣根から森に侵入してしまった的なルートをたどった私達。
森の外に出てからは元の入り口の場所に戻るのは早かったので、もしかしたら本当に神隠しの世界にでも入り込んでしまったのかもしれない。
…………単に犬含めて強烈に方向音痴なだけな確率が高いが
というわけで、無事マックとPCとコーラのある世界に戻ってきた私。
「いや~いい冒険でしたわ」と笑う私の隣で、顔を毒虫に刺された旦那は「二度と行かない」と呟いておりました。
他にも数十カ所刺されて顔とか腕のカタチ変わってました
というわけで、森があったら入ってみようの会。
これにて終了。
私はこの先も珍しい場所があったら飛び込んでいくと思うので、お供の者は覚悟するがいい。
ちゃんとした出入り口から見つけた森のトイレ。
おそろし過ぎて(虫的な部分が)これ以上近寄れなかった。