【日記】夫の寝言
旦那の寝言は酷い。
いびきも酷いのだが、寝言がともかく酷い。
あまりにも酷いので、ちょっとここで晒してみようと思う。
ダメぽ
隣でいびきをかいていた旦那が、突然言った。
「あ、これダメですねぇ」
彼は夢の中でも仕事をしているのだろうか。
だとしたら彼は家庭でも仕事でも夢でも、ダメな気がするが、確かにダメと言――。
「ムリぽ」
今、「ムリぽ」って言ったー!?
え、なにちょ、仕事でもムリぽとか言ってるの!?
夢の中でも消極的な旦那に衝撃を覚えている私の耳に、さらなるとどめの一言が届いた。
「ダメぽ」
誰だおまえは
隣で寝ていた旦那が突然大声を出した。
「誰だおまえはっ!!」
お前こそ誰だよ。本当に旦那か?
そう思いつつも、隣で寝ている旦那がバタバタと暴れだし、ベッドから犬や猫が蜘蛛の子を散らすように逃げていくので、さすがに彼を揺り起こした。
ちょっと、起きてよ
んああ……。ああ夢か……
あんた、なに見てたの?
いや、家を知らない中東系のおっさんが掃除しててさ。クイックルワイパーで一生懸命床拭いてるから、「なにしてんだ!!」って怒ったら「掃除です」って言われて、こいつ泥棒だって思って取り押さえたんだよ
……そのおっさん、たぶんいい人だよ
伝説のファイター
隣で寝ている旦那が急に呻きだした。
ガタガタと震え「ウーーウーー」と呻いている。
これは、ただ事では無いと思い立ち、慌てて旦那を揺り起こそうとしたその瞬間。
旦那が飛び起きながら言ったのだ。
「伝説のファイターが!!」
……と。
呆然とする私に、軽い戦闘をこなした兵士のような顔をした旦那が言う。
俺の前に伝説のファイターが現れたんだよ。互いの肩には光るバッチが付いててさ、その明かりをつけられたら周囲の人間に気がつかれて、GAMEオーバになるから、俺らはもみ合って、互いの肩のバッチのスイッチを入れようとして……俺の電気が伝説のファイターによってつけられたんだよ
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そんな寝言の激しい旦那と暮らして早10年。
いつか彼の口から徳川埋蔵金のありかが出てこないかと、淡い期待を抱いている。