空気の読めない爺さん【日記】
ちょっと賢者タイム(執筆集中タイム)に入っていた間に、とんでもない咳喘息に襲われたり、命の洗濯したりして、ネタ満載の千夜です。
さて、今日はそんなとある一日から「超絶空気の読めない爺さんと会った話」をしたいと思います。
冬も最中になるとね、犬の散歩を夜にするのは犬も人も辛いんでね、先日、昼間に犬の散歩に行ったわけですよ。
時間的には大体お昼。
私も犬も、愛想が良いのに人が苦手なんでね。
「私もこれくらいの犬を飼っててねぇ、もう18歳で死んじゃったんだけど……私もこれくらいの犬を飼っててねぇ――――」
という話を、老婆に永遠リピートされたくないので、お昼時の人気の無い住宅街を歩いていたわけですよ。
そしたら、数メートル先で、黒い服を着た爺さん二人組が、その住宅街のインターフォンを鳴らしては移動し、鳴らしては移動してるのが見えたんですよ。
見た瞬間思ったね。
「ああ、宗教勧誘だ……」
ってね。
ピンポン押してはインターフォン越しに断られ、パンフレット的なモノをポストに投函し、次の家へ向かっている。
これは、爺さん二人で行う宗教勧誘だ。
だからといって、犬の散歩をしている私には、釈迦もキリストも関係ない。
足早に爺さん二人組の横を通り過ぎ、家へと帰ろうとしていた……その時。
犬が突然力みだした。
消臭力を歌う西川の兄貴よりも固く強く、リードの先の犬が力んでいる。
これはウンコだ。
これは困った。
普段は公園の芝生の上か、我が家に添えられたトイレの上でしかウンコをしない犬が、何が緊張したのか、人様の家の前でウンコをするべく力んでいる。
困った。
犬飼猫飼いの私だって、家の前でウンコをされたら気分良いものではない。
ちゃんと掃除をしたところで、家の前の数㎝のゾーンが「ウンコの落ちた道路」になるのだ。
何の罪のないご近所さんがそんな不愉快な目に遭うのも申し訳ないので、私は犬からの内容物が※から落ちた瞬間。
そう、道路にその痕跡が残る前に、犬のウンコを空中キャッチしようと思い、私は力む犬の後ろでさらに力強く中腰になり、ビニール袋を広げた。
見知らぬ人の家の前で、相当な焦りを抑えつつ、犬の排泄待ちをする私。
かつて、これほどまでに「人に話しかけられたくない時」を感じたことはない。
だが、そんな力む犬の後ろで、ウンコ座りをして力んでいる私に話しかける愚者がいた。
「あの。ちょっとお話ししても良いですか? 今、皆さんに幸せについての冊子をお配りしていまして……」
そう言って、私の前にパンフレットを差し出す、爺さん。
オマエはバカカ?
何をどう見たら、この状況の人間が「ちょっとのお話がOK」だと思えるのだろうか。
そうこうしているうちに、犬の※から落とし物が産まれいずる。
目の前に差し出されたパンフレット。
ビニール袋から外すわけにはいかない犬のウンコ。
とりあえず私は、
「少しもお話しして良くないわ」
と、語呂の悪いアナ雪の歌のような返事をして犬のウンコをキャッチした。
生まれたての犬の排泄物を袋にしまっている私に、いまだに頑なにパンフレットを差し出し続ける爺さん。
天使にでもなったつもりなのだろうか。
ニッコニコの笑顔でパンフレットを差し出し、「では、せめてこちらを読んでいただけますか?」とのこと。
オマエはバカか?
一度ならず二度までも、この爺さんは私にパンフレットを頑なに渡そうというのか。
私自身、「空気は読むもんじゃねえ。変えるもんだ」と思ってやまないクソ人間だが、さらにその空気を怒りの方向にシフトチェンジする爺さんと遭遇してしまった。
とりあえず私は、
「犬のウンコより興味ない」
と、上手いこと言ったようでウンコ以下な捨て台詞を残して去って行った。