【面白い日常】交通事故が家の裏で起きた話【日記】
先日、明け方5:30に、「ドンッ!! ……プーーーーーーーー」という衝突音と鳴り止まないクラクション。そして女性の「誰か、救急車!!」という叫びに飛び起きた。
完全にヤバイタイプの交通事故が起こったようだ。
交通量の多い、駅前通に面した家に住む私は、1ヶ月に1回は車と道路。時には車と車の小競り合いを見ていたので、多少の交通事故では動じない。
だが、今回のは音量的にもちょっとヤバイものを感じ、寝起きが異常に悪い旦那に「救急車呼んどいて!!」と一声残すと、外に飛び出した。
事故現場は、家のすぐ後ろ。
上下線ともふさぐように真横になった乗用車。
エアバッグが飛び出し、アコーディオンのようにひしゃげたフロントからは煙が出ている。
助手席側のドアはお風呂の扉のように折りたたまれており、一目でマズイ状態だとわかる。
「大丈夫ですか!!」
駆け寄る私の脳内では
「煙が出ている。バッテリーかガソリンに火が付いたら大変だし、意識を失っているようなら車内から引きずり出さないと。ああ、でも頭を打っているようだったら気をつけないと……。というかこのドア、開くのか!?」
など、普段Intel Pentium4位の処理能力しか無い脳みそを、Core i3位の速度で動かし、この事態をどうにかする最善の方法をシュミレーションしていた。
そして、車内を覗く私。
…………誰もいない。
ここで、思考が1度止る。
思考が停止したまま顔を上げたその時。
私の真隣に、スキンヘッド、アロハシャツのシティーハンターのファルコンみたいなおっさんが、頭から血を流して立っていたのだ。
ここで2度目の思考停止。
「もしかして、運転手は車外に吹き飛ばされ、幽体となって今私の目の前に立っているのだろうか。というか、酒臭えし。ってか、絶対「ヤ」のつくお仕事の関係の方だよね!?」
そんな思考が0.3秒の間に脳内を渦巻き、そして私は。
無言で後ずさって、野次馬のおっさんの後ろに隠れた。
どうやら、状況を見るに、飲酒運転で細い駅前通を吹っ飛ばし、小さな橋があって少しだけ道幅が狭くなっていることが判断付かず、そこに単独で突っ込んでいったらしい。
飛び出した直後は、助けなきゃ……というアドレナリン100%の思考で視野が狭くなっており、このファルコンみたいなおっさんに気がつかなかったようだ。
だが、人間アドレナリンがでると皆そうなるらしく、後からきた近所のおっさんも「大丈夫かっ!!」と車内をのぞき込み、次に頭から流血しているファルコンに気がつき、ビクンっ!! と身体を震わせていた。
その様は、ドリフのコントで志村が驚いたそのリアクションそのままだった。
事故をしたのが、酔っ払いのヤ……もとい、ファルコンで、しかも流血はしているものの命に別状はなさそうとみて、(因みに始めに叫んでいたのは、散歩中のおばちゃんだった)、救助に駆けつけたご近所も、野次馬のご近所も「死んでないならいいわよね」と、苦笑を浮かべてあっという間に退散していった。
道も完全にふさいでしまっているので、交通誘導もなにもあったものではない。
敷いて言えば、何をパニクったのか、頭から血を流すファルコンが車を動かそうと、煙が出ている車をエンジンかけ、更に煙が増し「火事になったらどうすんだよ!! まあ、うちが燃えなきゃどうでもいいけどな!!」という、冷静かつ他者との垣根の高い半端田舎のヤジを聞かされたのが怖かったくらいだ。
鳴り響く救急車・消防車・パトカーのサイレン。渋滞する車のクラクションにめげず家で爆睡する夫を眺め、この時代を生き抜くにはこれくらいの図太さが必要なのかもしれないと思ったのだった。