猫の出産に立ち会ったときの話
私はなんだか猫に好かれる。家の外にも中にも猫がいる状態だ。
いや、好かれるというよりも、「寄られる」というべきだろうか。
高校の時に、玄関開けたらドアの前に段ボールに入れられた子猫を見つけて以来、30とン歳を過ぎた今までで40匹くらいの猫を保護したりしている。
なにも好き好んで猫のボランティアとかしているわけじゃない。
玄関開けたらいたり、ボロボロになった子猫に尾行されたり、竹藪かき分けたりしたら目の前にいたりと、不可抗力だ。
先日も玄関開けたら、猫ではなく見知らぬ白髪ジャージ姿の老婆が立っていて、「あんたには猫神様がついているんだよ。もっと猫を可愛がってあげてねぇ」と、猫の餌を一袋渡してきたりという珍事件もあったほどだ。(実話)
そんな私が、今の家に引っ越して半年も経たないとき、玄関を開けたらお腹が大きな猫が家に堂々と飛び込んできたのだ。
確実に、いる。
腹の中にちっさい猫がいる。
その母猫は玄関に置いてあったゲージに堂々と入り込んで、「なにか?」的な顔をしている。
もう二度と玄関開けるのやめようかな。
そう思いながらも、こうなった以上見捨てるわけにもいかない。
お客さん用の部屋を急きょ蚕室に変え、来るべき日に備えて…………と思ったら一週間もしないうちにモリモリ出てきました。
深夜に始まった猫の出産。
さすがに、乳飲み子を育てたことはあっても、猫の出産に立ち会うのは初めての私。
お湯やら消毒したはさみやらタオルやらを備え、猫のブリード経験者のペットシッターのグレースママさんにいつでも連絡取れるようにして様子を見ていたのだが、途中、腕が突っかかった子猫を尻から半分出しつつ、バックで迫られたという事態を省けば、滞りなく出産も終わり、猫は安産だというお話も納得。
余談だが、最後の出産の際、母猫に胎盤を投げつけられたのだが、どうやら胎盤には栄養が含まれており、母猫はすぐにそれを食べてお乳に備えるのだが、それを「産婆兼乳母」である私にもおすそ分けしてくれようとしたらしい。
いつから、私は猫の乳母になったのだろうか。
ともあれ無事5匹の子猫が生まれ、私はその興奮をツイッターなどで呟きまくって、もののついでに里親も募集していたのだが…………。
私はとんでもないミスをしていた。
産室の下に敷いた新聞に、でかでかとゴジラ松井の写真がドアップで載っており、撮る写真撮る写真、カメラのピントがゴジラ松井の顔に行くという……。
まぁきっと、彼も優しい方っぽいので、喜んでおられるであろう。
ともかく、松井選手の顔と共に、子猫たちはすくすく成長していく。
ある程度大きくなってきたところで、里親募集をしたのだが(すでに我が家は3匹の猫と1匹の犬を飼っていた)、やっぱり見た目が可愛い子からもらわれていくのが世の常で。
この子たちはすぐに貰い手が決まったのだが、一匹、真っ黒で「もぶ~っ」とした顔の子が中々な決まらない。
実物はかなりかわいいのよ
一番最後に生まれ、母親の尻に腕が突っかかり、ビビる私に引っ張り出された子なのだが、一番小さく兄弟の中でも結構いじめられ役。
その割には、シャーシャーと威嚇する癖にがあるので本気で「貰われる気ねえだろ」と突っ込みたくなる。
一応、この白い子と比較検討されたこともあったのだが、先住猫・犬がいるとのことで威嚇癖のあるこの子は却下。
そして、先住猫の妹に!!とお試しで預かったお家でも、旦那さんが猫アレルギーの許容超えで湿疹が出てしまい返却。
一度外に出て帰ってきた子は、何度もそれを繰り返すと人を信じられない子になるため、もう母猫と共にうちで引き取ることに。
そんなわけでうちの子になることになったこの黒い猫は、鼻筋が一本通っているので「ビバリとルイ」から「ビバリ」と命名。
出展:ビバリボット
母猫は、以前保護してツチノコ先生に里親に出した猫を「和歌山さん」と命名していたので、今度は「香川さん」と命名。
今ではただのデブに成下がり、平和な生活を謳歌しているが、もしこいつが人間と意思の疎通ができるならば、「どうしてワザワザうちを選んだのか」と質問してみたいものである。
というわけで、心配と世話をかけつつ子猫たちはすくすくと大きくなり、優しい里親さんの元へと巣立って行ったのだ。
あまりいないと思うが、猫神憑きなついでに言わせてもらうと、もし私のように猫を拾ったり、お腹の大きな猫を保護したり、裏庭で子猫が生まれた……ということがあったら、保護ができるならもちろんした方が良いのだが、経済的、肉体的にできない……という場合は、もうそっとしておいた方がまだマシである。
稀に、猫を保護したはいいが、世話しきれない、動物病院のお金がかかる、里親が見つからないといった理由で、保健所に連れていく狂気の人を見ることがあるが、それは「生き延びる可能性のある命をその場の思い付きで取り上げて殺した」だけである。
猫だって、生存本能があるわけで、ほっておいたら誰かほかの救える力がある人が助けてくれるかもしれないし、自ら生き延びる可能性だってある。
もちろん、カラスに襲われて、病気になって、等で死んでしまう場合もあるが、なにもあなたが無駄に殺すことはない。
因みに、動物病院によっては野良猫の保護ということで、格安で診察してくれるところもあるし、餌代だってよく考えたら私が飲みに行く1回の値段よりはるかに安い。
といっても、一度病気の猫を保護すると軽く10万近くは飛んでいくので、私としてはもうこれ以上猫を拾いたくはないのだが、猫神様は私の貯金がたまったころ合いを見計らって新たな猫を送り込んで――。
ではでは、滅多にみられない生まれたての子猫の写真を見て、心癒されて、本日のブログは終了としてほしい。